独学で資格を取得するエンジニアの日々

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統計検定とは? 概要、難易度、おすすめテキスト・参考書・問題集などを解説

 

kurupanです。

 

 最近、勤労統計の不祥事や、IoT・ビッグデータの普及に伴い、にわかに「統計学」が注目を浴びています。

 少し前に統計学が最強の学問であるという本が流行ったこともありました。

こんな本が流行るくらい、統計学の価値が一般的にも見直されてきているのです。

 統計学に興味を持ち始めた方に、ぜひ受験していただきたいのが統計検定です。私も統計検定2級を取得しました。

 本記事では統計検定について解説していきます。

 

 

 

 

 

統計検定とは?

  まず、統計検定とは何でしょうか?統計検定の公式HPには以下の記載があります。

「統計検定」とは、統計に関する知識や活用力を評価する全国統一試験です。
データに基づいて客観的に判断し、科学的に問題を解決する能力は、仕事や研究をするための21世紀型スキルとして国際社会で広く認められています。
日本統計学会は、中高生・大学生・職業人を対象に、各レベルに応じて体系的に国際通用性のある統計活用能力評価システムを研究開発し、統計検定として実施します。

統計検定HP http://www.toukei-kentei.jp/about/

 現代社会は情報化社会です。社会には数多の情報が満ち溢れており、社会人には(理系・文系問わず)これらの情報に対して適切な判断を下す能力が求められます。

 今後、IoTの普及に伴ってあらゆるモノにセンサーが取り付けられ、インターネットを介して情報が収集される、いわゆるビッグデータの活用が進んでいきます。このビッグデータの取り扱い方を考えるために重要なのが、AIと統計学になります。

 また、厚労省の統計不正問題が取り沙汰された際に、日本の統計軽視の姿勢が明るみに出ました。行政に限らず、統計は今後の方針を判断する際の根拠となるものです。根拠となる部分での誤りを見極めることができなければ、今回のような問題を引き起こします。ある意味、今回の問題で、統計学にスポットライトが当たったことは怪我の功名と言えます。日本の統計教育がアメリカ等の先進国と比べて大きく遅れ、統計学を専門とする人材が不足していることも統計不正の一因として報道されたからです。

 統計学の重要性が見直された今、統計学の知識を証明できる統計検定の価値は増していると考えています。

 

種別・難易度は?

 統計検定には以下の種別があります。(統計検定HPから抜粋)

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 資格制度の軸となっているのは統計検定1~4級です。1級ともなれば、統計学の専門家として認められます。2級は大学1・2年生程度の知識が求められます。準1級は1級と2級の差が大きすぎるために新設された種別で、その中間の難易度となっています。3級は高校卒業程度の知識が求められます。4級は、中学卒業程度の知識が要求され、3級の出題範囲のうち基礎的な部分が出題されます。 

 統計調査士・専門統計調査士はその名の通り、統計の調査に関する資格です。統計検定の知識に加えて、公的統計の役割や統計調査の仕組みなどが問われます。

 また、これらの種別に加えて、2019年度末には、データサイエンスに関する種別が新たに創設される予定となっています。

 

 

必要な勉強時間は?

 実は、統計学の問題を計算するのは難しくありません。難しいのは、統計学の概念・考え方を理解することでした。この考え方を始めに理解しておくか否かで、必要な勉強時間が大きく変わってくると思います。

 参考までに、統計検定2級を取得するのに要した時間は以下の通りでした。

  • 勉強期間:約3ヶ月強
  • 勉強の頻度:月〜土曜日に毎日1時間
  • 総勉強時間:約80時間

 完全な初学者であれば、更に10〜20時間は必要だと思います。

 勉強を始める前の私の統計学の知識は高校卒業レベルでした。(大学では単位を取るのを諦めました・・・)

 もちろん、種別によっても必要な時間は大きく変化すると思います。特に、1級・準1級は論述形式となり、難易度が跳ね上がるため、必然的に必要な勉強時間が増えることになります。要注意です。

 

合格率は?

 2019年6月16日実施分と2019年11月25日実施分の試験の合格率は以下のとおりです。(6月と11月で受験可能な種別が異なるため、2回分記載します。)

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 やはり、1級・準1級は難易度が高く、合格率が2割程度となっています。(1級は、統計数理・統計応用の両方に合格する必要があるので、実際の合格率はもっと低いです。)2級は4割強で、難易度が低めの3級・4級・統計調査士は5割を超えており、専門統計調査士は3割を切っています。 

 受験者数は、2級・3級が多いです。統計の知識がある程度ある方は2級を、統計の初学者の方は3級から受験することをおすすめします。

 

回答形式は?

 各種別の回答形式は以下の通りです。基本的にはマークシート方式ですが、高難易度の1級・準1級は論述形式となります。(統計検定HPから抜粋)

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  また、基本的には指定された試験会場で紙媒体を用いて、試験が実施されますが、2級、3級、統計調査士は、コンピューターを使ったCBT試験も実施されています。

www.toukei-kentei.jp

 会場が全国各地にあり、紙媒体の試験より実施頻度が高いので、日程調整が難しい多忙な方には便利です。

 

仕事に役立つ?おすすめの種別は?

 前述のとおり、 近年急激に統計学を修めた人材に注目が集まっています。従来の工学・生物学・心理学・社会学などにおける実験(アンケート)データを取り扱う方や、データサイエンスに関わるエンジニア、IoTによるスマート工場で勤務する方には、是非取得していただきたい資格です。

 また、公的・民間調査会社に勤務している方にとっては、統計調査士・専門統計調査士はほぼ必須と言っていい資格でしょう。または調査会社をよく利用される方もデータの正しい解釈をするために取得をお勧めします。

 私は工学、とりわけ生産技術関係の研究者ですが、取得した膨大なデータの解釈や、信頼性の評価、効率的な実験計画の立案など、統計検定の知識が活躍する場面は多いです。特に、研究内容を報告する際に、データの信頼性を定量的に示すことができるため、自信をもって報告することができますし、上司の迅速な意思決定をサポートすることができます。

 世間一般で考えられているより、統計学の適用範囲は広いです(選挙速報の当確情報などにも、(推定)統計学が活用されています。)。統計学は、効率化の学問でもあります。自身の業務でも統計学を生かせる場面がないか、一度考えてみることをお勧めします。

 個人的には、研究開発・生産技術・品質管理などに関わる技術者が業務で必要な知識を習得するという目的であれば2級で十分だと思います。もちろん、統計についてもっと深く知りたい方は、1級を目指しましょう。

 

 

試験実施時期は?

  例年、6月と11月に実施されています。

 6月は統計検定準1級、2級、3級、4級が、11月は準1級以外のすべての種別が実施されています。

 試験日のおよそ2ヶ月前から申込受付が始まり、およそ1ヶ月前が申込締切となります。

 忘れずに確認しておきましょう

統計検定:Japan Statistical Society Certificate

 

 

申込方法は? 

 web申込みと郵送申し込みの2種類の方法があります。簡単なので、web申込みをおすすめします。 

 手順は以下のとおりです。

  1. 統計検定公式HPの「受験のご案内」から受験したい日のページにアクセス

    www.toukei-kentei.jp

  2. 「受験申し込み」の項目から「web申し込み」を選択
  3. 申し込みフォームに必要事項を記入する
  4. 受験料を支払う

 受験料の支払い方法は、クレジットカード決済とコンビニ決済の2つから選べます。

 

 また、CBT受験の場合は申込方法が異なります。詳しくは以下のページを御覧ください。

cbt.odyssey-com.co.jp

 

受験料は?

 受験料は以下のとおりです(いずれも税込み)。種別によって異なります。

 

・統計検定1級(統計数理):6000円

・統計検定1級(統計応用):6000円

 ※上記2つを同時に受験する場合は、合わせて10000円

・統計検定準1級:8000円

・統計検定2級:5000円

 (CBT一般:7000円 CBT学割5000円)

・統計検定3級:4000円

 (CBT一般:6000円 CBT学割4000円)

・統計検定4級:3000円

・統計調査士:5000円

    (CBT一般:7000円 CBT学割5000円)

・専門統計調査士:10000円

 

 

おすすめの勉強法は?

 とりあえず、公式HPで公開されている過去問を眺めてみましょう。

www.toukei-kentei.jp

 ある程度解ける場合は、過去問演習に進んでOKですが、大抵の場合は歯が立たないと思います。

 その場合は、テキストで勉強しましょう。公式テキストが販売されています。公式なので当然ですが、試験範囲をしっかりと網羅しており、マスターできれば確実に合格できると思います。ですが、私が読んだ限り、いきなりこのテキストから勉強を始めても、なかなか理解できないと思います。もう少し優しい参考書から勉強し始めましょう。

 

◯1級・準1級向け

 ◯2級向け

 ◯3級向け

◯4級向け

 

おすすめの参考書・テキストは?

 いきなり公式テキストから勉強を始めても、理解するのは難しいと思います。そこで、私が公式テキストに手を付ける前に読んだおすすめの参考書をご紹介します。 

初学者向け 

 統計学を学んだことがない方や、大学時代に統計の教科書を読んで挫折した方(私がそうでした・・・)に読んでいただきたいのが、こちらのマンガでわかる統計学です。

 その名の通り、とっつきにくい統計学がマンガでわかりやすく解説されています。

 基本的に、

見開きの左側に文章での解説

右側にキャラクターが統計に関する話題をわかりやすく解説するマンガ

という構成になっています。

 キャラクター同士の会話も軽妙で、話題も身近なものが多く、サクサク読み進めることができます。

 一番の特徴は、数式をほとんど使わずにイラスト・グラフで解説していることです。

 統計を学ぶにあたって、まずはじめに挫折しやすいのが、複雑な数式や記号を理解することですが、本書は数式を使わずにイラストやグラフで説明するので、直感的に理解することができます。

 平均・分散・標準偏差といった基本的な内容から、確率分布、推測統計、仮説検定といった応用的な内容まで網羅しているので、統計検定2級の試験範囲までカバーすることができます。(もちろん、他のテキストでの補完は必要ですが。)

 数式で説明する硬派なテキストを始める前に、こちらのマンガで「統計って結局何をするものなんだ?」というざっくりとした概念を理解しておくと、挫折せずに効率よく勉強できると思います。

初学者〜中級者向け

 ざっくりとした統計の概念を理解している方におすすめしたいのが、こちらの入門統計学です。

 こちらの本は数式が出てきますが、比較的少なめです。例題を使いつつ、公式に依存せずに、統計的手法の背景からわかり易く丁寧に解説しているため、しっかりと理解しながら読み進めることができます。

 大学の教養課程で使うような参考書と比較すると、文体も軽めで読みやすいです。

 収録内容は、基本の平均・分散といったものから、推定・仮説検定だけにとどまらず、多変量解析や、実験計画法といった部分までカバーされており、統計検定の勉強には十分です。

 後半は実践的な内容も含みます。実際に業務で統計的手法を用いる方は、まずはこの本をとっかかりにして概念を理解してから、専門的な参考書に進むと良いでしょう。

 

中級者〜上級者向け

 ある程度統計学を理解している方や、数式に抵抗がない方に読んでいただきたいのが、こちらの統計学入門です。

 いわゆる大学の教養課程の教科書で、長く読み継がれている名著です。

 「入門」と書名にはついていますが、初学者には難しいです。

 しかし、データの解釈の仕方から、推定・仮説検定・回帰分析まで、理論的にも実践的にも網羅されており、統計学を学習するための参考書としては申し分ない内容となっています。

 練習問題も充実しており、これらをすべて解けるようになれば、間違いなく実力が身についていることでしょう。

 

 これらの参考書を読んでから、公式テキストに着手されることをおすすめします。

 

 

 

 

おすすめ問題集は? 

 権利の都合で、過去問は公式のものしか販売されていませんが、解説が充実しているので、この公式過去問集だけで十分です。(他に統計検定に対応した問題集がないこともありますが。)1級・準1級は2回分ずつ、それ以外は6回分収録されています。毎年発売されているので、最新のものを購入しましょう。

 私は試験前にこの問題集を1周しました。2級だったので、6回分解いたわけですが、解き終わった頃には合格するのに十分な実力を身に着けた自信を持てました。

 多くはありませんが、ある程度パターン化しているような出題もあるので、この問題集は必須だと思います。(個人的には公式テキストより、この公式問題集のほうが優先度が高いと思っています。)ぜひ購入されることをおすすめします。

 

まとめ

  本記事では、統計検定について解説しました。

 前述したように、AI、ビックデータの普及に伴い、統計学の価値が見直されている現代において、この資格も重要度が増してきています。

 職務に活かすためだけではなく、世の中に蔓延る数字のマジック(バラつきを考慮せずに平均で比較するデータや、母集合を恣意的に操作したアンケート結果など)に騙されないためにも、統計検定の受験を通じて、統計学的なリテラシーを身につけることをおすすめします。